資産活用通信2019年7月号「生前贈与の賢い活用法~ダブル適用で財産減らし~」
生前贈与の賢い活用法~ダブル適用で財産減らし~
贈与税の申告もお忘れなく!
♦暦年課税と相続時精算課税の申告状況は
●「暦年課税」の申告状況
「暦年課税」とは、毎年1月1日から12月31日までの間に贈与を受けた金額(合計)から110万円(基礎控除)を差し引いた額に税率を乗じて贈与税を申告・納付する方法をいいます。
贈与税申告書提出者のうち、暦年課税適用者は48万9千人(このうち、「特例税率」<注1>適用者は23万8千人)で前年より4.1%の増加に。一方納税額は、423億円減(▲16.4%)でした。
<注1>「特例税率」は、直径尊属(祖父母や父母)から、1月1日時点で20歳以上の子や孫への贈与の際に適用する軽減税率をいいます。
●「相続時精算課税」の申告状況
贈与を受けた額の贈与税を贈与者の相続時の相続税で精算するという「相続時精算課税」を適用した人は4万9千人で、前年比0.1%減でしたが、逆に納税額は23億円増(10.2%増)となっています。♦住宅取得等資金の非課税の申告状況
住宅取得等資金の非課税を適用した人は前年比2.1%増の6万6千人で、贈与を受けた住宅取得等資金も6,508億円(前年比29.6%(1,485億円)増)へと大幅増に。また、このうち非課税適用額も全体の95%の6,159億円で、同様に大幅増加になりました。
暦年課税の非課税枠“110万円”の賢い活用法
♦配偶者への自宅贈与でも活用できる!
結婚20周年を迎えた夫婦なら、自宅を非課税で贈与できる制度があります。最高2,000万円まで無税で自宅土地や建物を贈与(多くは持ち分贈与)できるため、シルバーライフに向けて奥様に「永年の愛情の証(あかし)」をお届けするというのはいかがでしょうか。
ポイントは暦年課税の“110万円”の非課税枠(基礎控除)を使う点です。既述の2,000万円に基礎控除を加えると、合計2,110万円まで非課税になるわけです。一般的には夫より長生きする奥様には、夫の相続時の事前対策になると同時に、ご自身の将来の生活基盤の確保にもつながります。
♦住宅取得等資金の贈与でも活用できる!
親が子に住宅取得等資金を援助する場合、消費税が8%の現在では耐震住宅やエコ住宅なら1,200万円(3,000万円)<注2>、一般住宅なら700万円(2,500万円)<注2>の非課税枠が使えます。
この制度では、暦年贈与、相続時精算課税のいずれかとセットで使えるのも特徴です。
<注2>( )内の金額は、2019年10月以降に消費税が10%に増税された時点での非課税限度額
●暦年贈与とのダブル適用のケース
消費税8%で「一般住宅を取得するケース」で、暦年贈与とダブル適用すると、810万円(=700万円+110万円)までなら非課税で贈与できます。仮に1,000万円を贈与しても、贈与税負担は19万円(税率10%)で済むのです。
●相続時精算課税とのダブル適用のケース
相続時精算課税制度とのダブル適用では、なんと3,200万円(=700万円+2,500万円)までなら無税で援助できるわけです。
実際には、多少は非課税枠を超えて援助するのも有効です!少しくらい贈与税を負担しても、まとまった資金援助で子の住宅ローンを抑えられれば、結果的に将来の負担(元本返済と利息)を減らせますので、メリットにもつながります。
♦生前贈与で財産減らし!
生前贈与は、将来の相続財産減らしに有効です。
子への生前贈与は、被相続人(本人=父)死亡前3年以内に行った生前贈与は“相続として相続税の対象”になりますので、健康上の問題があるようなら孫に生前贈与して財産を減らしましょう。
たとえば孫5人へ310万円ずつ贈与すれば、一度に1,550万円の財産が減らせます。(贈与税負担はそれぞれ20万円生じます。)また、孫への教育資金の贈与(限度額1,500万円)はこれとは別に実施できますので、5人合わせれば7,500万円もの贈与ができ、財産減らしにつながります。ちなみに、これら対策で短期間に総額9,050万円の財産減らし=相続対策を実行できたことになるのです。
とはいえ、相続対策目的の贈与は効果があがっても、“ありがたみ”に欠ける印象も…。できれば贈与者(親や祖父母)の想いが伝わる、子や孫が感謝するような贈与をしたいものです。
なお、実際に贈与を実行される前には「税法に沿った、また、効果的な贈与」を実行するためにも税理士などの専門家にご相談されるよう、おススメします。