FP通信2023年10月号「中小企業経営者の有効な資産形成とは? 」
中小企業経営者の有効な資産形成とは?
新NISAの開始
2024年1月から「非課税投資枠の大幅な拡大と制度の恒久化」を目的とした新NISAがスタートします。
新NISA制度のポイント
- 一般NISAとつみたてNISAの併用が可能に
- 年間投資上限額が最大360万円に拡大
- 生涯非課税限度額が最大1,800万円で新設
- 非課税保有期間の無期限化
- 制度の恒久化
現行NISAと比べてとてもNISAの使い勝手は大きく向上しそうですが、中小企業経営者の場合は、法人税や社会保険料、所得税、住民税の効果も考慮に入れてトータルで考える必要があります。
手取りと会社が準備する金額の違い
例えば役員報酬100万円の社長が10万円をNISAで運用する場合を考えましょう。
この10万円は手元に来るまでに色々引かれています。
税金が所得税と住民税で約2万円、社会保険料が健康保険・介護保険料・厚生年金で約1.2万円引かれます。
給料明細の額面では13.2万円支給ということになります。社会保険料は労使折半なので、同額を会社が払います。
10万円をNISAで投資しようとした場合は、会社としては約14.4万円を用意することになります。
マイナス4.4万円スタートの投資
会社の約14.4万円=手取り約10万円になります。
※ 計算は概算です。個別のケースは専門家にお問い合わせください。
役員報酬と退職金
退職金等は長年にわたる勤労の対価のため役員報酬に比べ税金の優遇があるのが退職金等です。
退職所得のメリット
- 退職所得控除・・・勤続年数に応じて退職金から控除
- 1/2課税・・・退職所得控除を引いた金額から1/2
- 分離課税・・・他の所得と分離して課税
※ 現在、退職所得課税優遇の見直しが検討されていますので、今後の改正にご注意ください。
目減り前のお金で
社会保険料や税金を引かれる前のお金で払い、将来退職金等で受け取る事が出来ればメリットが出そうです。
- セーフティ共済・・・連鎖倒産対策になる
- 企業型401K(企業型確定拠出年金)の経営者プラン
- 中小企業退職金共済(中退共)・・・役員は加入不可
- 養老保険(福利厚生プラン)・・・従業員と一緒に加入可
- 生命保険(役員保険等)・・・保障を持つことが出来る
- iDeCo(個人型確定拠出年金)・・・年金を運用・積立
- 小規模企業共済・・・中小企業経営者の為の退職金
※ iDeCoと小規模企業共済は社会保険料の効果なし
運用効果
401KやiDeCoは投資信託を選択、生命保険の場合も変額保険であれば掛け金の一部を運用することができます。
ただし、あくまでも運用ですので、選択した商品やタイミングによっては目減りするリスクがあります。また、期間や金額などはご自身の状況やライフプランに合わせて慎重にご検討ください。
受取時の税金等
受取時は退職金等の扱いになるものは退職所得の優遇があります。種類の違う退職金等を一定の期間をあけて受け取ると、退職所得控除を再利用できる方法もあります。また、401KやiDeCoは年金で受け取れば公的年金と同じ雑所得になります。受け取りの方法は、メリットを最大限生かせるように慎重に計画しましょう。
メリット・デメリット
401KやiDeCoはお得に運用にお金を回せるメリットがある反面、最低でも60歳までは引き出すことができないデメリットがあります。一方NISAは掛け金のメリットはありませんが、いつでも現金を引き出すことができます。
目的別に老後のお金は401K、途中で使うかもしれないお金はNISAでと目的に合わせて併用するのがリスクが少ないでしょう。