宇江佐真理
女性作家の宇江佐真理さんが昨年亡くなって1年が経ちます。まだ66歳の若さでしたので、
とても残念なことでした。
私は女性作家の小説は、あまり読みません。なぜなら理由が2つありからです。一つは、
気楽に読もうとする小説だと、女性ならではの細やかな描写で気が疲れることがあるからです。
もう一つは、男性作家と比べて、大胆さが乏しいことです。例えば剣豪ものだと、女性がいくら
書き上げてもリアルさが欠けるということです。
宇江佐さんの作品は、確かにそういった面は否定できませんが、それらを補って余りある
ものがあります。文面からにじみ出る一介の市井の人々に対する前向きの明るさと、
暖かい思いやりが流れています。
特に好きな小説は、『髪結い伊佐治捕物余話』シリーズでして、これは絶品です。
これには思わずのめり込んでしまいました。
晩年に書いた『口入やおふく 昨日見た夢』は宇江佐真理の新しい境地を開くものと思われ、
このシリーズが1冊で終わったことが、返す返すも残念です。本当に素晴らしい作家でした。
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