ランナーズハイ
先日、毎年恒例の全日本柔道大会が開かれ、原沢選手が同学年のライバルである王子谷選手に勝ち、
優勝しました。
原沢選手は、リオオリンピックの100KG超級で、銀メダルに輝いたのですが、その後オーバーワーク
症候群にかかって体調を崩し、練習を再開してまだ4ヵ月だったということでした。
原沢選手は、まだ調子が良くなく、準決勝までの4試合のうち3試合が延長戦にもつれ込み、かなり
疲労困ぱいしていました。なにせ準決勝では、最後の勝負がついた後、畳に仰向けになり、しばらく
起き上がれずに、審判から立つようにと言われるほどの状態でした。
一方の王子谷選手は、準決勝まですべて時間内に勝負をつけて立ち上がってきましたので、体力は
万全でした。
決勝戦は、まず王子谷選手の圧勝だなと思っていたのですが、なかなか決着がつかず、延長戦に
もつれ込みました。
ところが見ていると、段々原沢選手が平気な顔になってきているのに対し、王子谷選手は、途中から
起き上がれずに、膝に手を添えてようやく起き上がる状況になってきたのです。
これは原沢選手が、ランナーズハイの状態になったのではと感じました。ランナーズハイとは、
マラソンなどで激しい運動を続けていたときに、途中から体が楽になり、あと幾らでも走ることが
出来るような状況になるというものです。
これは私にも経験があります。合気道の六段の昇段審査の時です。初めのうち一生懸命審査を受けて
いたのですが、「この調子でいくと、これでは途中でバテてしまう」ということを体が訴えてきました。
そこで、気は入れるが力を抜く、ということを心掛けて審査を続けていくうちに、途中から体がとても楽になり、
後1時間でも、2時間でも動けるような気持ちになってきたのです。
比較するのも恐縮ですが、おそらく原沢選手もそういう状態だったのでしょう。一方の王子谷選手は、
力を使い果たし、最後は脱水状態になってしまい、閉会の時にも起き上がれないほどでした。
ランナーズハイの秘訣は力を抜くことだと思います。現に決勝戦の延長戦では原沢選手は、まさに
その通りに見えました。それにしても日本一を決める全日本柔道選手権は、見ごたえのあるものでした。